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日本酒の造り方:製造工程の概要

日本酒の造り方:製造工程の概要

日本酒の醸造プロセスを、原料選びから瓶詰めまで、魅力的に解説。日本酒の背後にある職人の技と文化に触れてみましょう。

基礎知識 醸造 製造工程 伝統技法

日本酒の造り方:製造工程の概要

日本酒造りは、単なる製造ではなく「芸術と科学の融合」。精米された米に、麹菌と酵母、水が加わることで、一本の日本酒が生まれます。工程を知れば知るほど、次に口にする一杯がもっと特別なものに感じられるはずです。

日本酒を醸造する職人が、麹室で麹を手入れしている様子。蒸気が立ち上る中、真剣な表情で米を混ぜる

製造工程の全体像

以下は、日本酒ができるまでの代表的な9つのステップです:

  1. 米の準備(洗米・浸漬・蒸米)
  2. 麹造り
  3. 酒母育成
  4. もろみ発酵
  5. 搾り
  6. ろ過
  7. 火入れ
  8. 熟成
  9. 調合と瓶詰め

主要な原料たち

酒米(酒造好適米)

日常で食べる米とは違い、日本酒専用に品種改良されたのが「酒米」です。粒が大きく、中心部に「心白(しんぱく)」と呼ばれる白くてデンプン質の多い部分があるのが特徴です。

  • 山田錦:最も高級とされる「酒米の王様」
  • 五百万石:すっきりとした味わいに向く
  • 雄町:野性的でふくよかな風味
  • 美山錦:寒冷地に適したバランス型

4種類の酒米(山田錦、五百万石、雄町、美山錦)を並べて比較した図。拡大された粒の断面も描写

日本酒の80%以上は水。軟水か硬水かによって酒の個性が変わります。

  • 軟水:なめらかで柔らかい口当たりに
  • 硬水:しっかりしたコクと厚みが生まれる

鉄やマンガンは雑味の原因になるため、含まれていないことが重要です。

麹菌(こうじきん)

麹菌(Aspergillus oryzae)は、米のデンプンを糖に変える小さな「魔法使い」。味や香りを左右する重要な存在です。

酵母

酵母は糖をアルコールと香りに変える立役者。吟醸香や果実のような香りも、この酵母によって生み出されます。


工程を深掘りしてみよう

精米と蒸米

精米では米の外側を削り、雑味の元を取り除きます。高級酒では60%以下まで削ることも。

蒸米は茹でずに蒸しあげ、芯を残しつつ表面をやわらかくします。

麹造り(約48時間)

  • 初日に麹菌をまぶし、
  • 2日目に温度と湿度を厳密に管理しながら育てる
  • 白くフワフワした麹が完成

麹の出来で酒の出来が決まるとも言われます。

酒母造り(もと)

強い酵母を育てるためのスターター。速醸法、生もと、山廃もとなど、方法で味が変わります。

  • 速醸もと:スッキリでフルーティ
  • 生もと・山廃もと:複雑で旨味が強い

もろみ発酵

糖化とアルコール発酵を同時に進める「並行複発酵」が日本酒の特徴。

  • 発酵期間:2〜4週間
  • 温度管理が命
  • 三段仕込み(初添え・仲添え・留添え)

もろみが入った大きなタンクの中で泡が立つ様子。職人が様子を見ている構図

搾りとろ過

袋に入れたもろみをゆっくり搾る「槽搾り」や、機械式の「アコーディオンプレス」で酒と酒粕に分けます。

最初に出てくる「荒ばしり」は軽やかでフレッシュ。中取り、責めと風味も変わります。

火入れと熟成

60〜65℃で加熱することで酵素と菌を不活性化。これを「火入れ」と言い、ほとんどの日本酒は2回行います。

熟成により酒はまろやかに統合されていきます。


地域とスタイルの多様性

  • 新潟:淡麗辛口、軟水仕込み
  • 灘(神戸):フルボディ、硬水使用
  • 伏見(京都):エレガントで丸みがある
  • 北海道:寒冷地ならではのクリアな仕上がり

まとめ:職人の想いが詰まった一滴

日本酒は単なるアルコール飲料ではありません。一粒の米が、幾重もの手間と時間を経て、日本酒という「文化」へと昇華するのです。

次に日本酒を飲むときは、ラベルの裏にある物語を、ぜひ思い浮かべてみてください。

蔵の前で微笑む杜氏(とうじ)と蔵人たち。背景に木桶や蔵の暖簾が見える写真

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