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日本酒の酵母と発酵

日本酒の酵母と発酵

日本酒造りにおける酵母の働きや、並行複発酵、三段仕込みなど、世界に誇る発酵の技術をわかりやすく解説。

酵母 発酵 三段仕込み 製法

日本酒の酵母と発酵

あなたは知っていましたか?

たった一粒の米が、あの芳醇な日本酒になるまでに、目には見えない“生命”のドラマがあることを。

酒蔵の静寂のなか、ぷくぷくと湧き上がる泡。その下では、酵母たちが命をかけて発酵という名の魔法を繰り広げているのです。

この記事では、日本酒が生まれる裏側にある“微生物たちの舞台”へと、あなたをご案内します。読み終わる頃には、きっと日本酒を片手にじっくり味わいたくなっているはずです。

静かな蔵の中、タンクの表面にぷくぷくと浮かぶ泡。そこでは目に見えない生命たちが、米を酒へと変える奇跡を起こしています。この記事では、日本酒を支える“発酵”の神秘を紐解いていきます。

酒蔵のタンクの上に湯気が立ち、発酵中のもろみから泡が立つ様子。穏やかな朝の光に包まれた蔵の中

酵母とは?

酵母の役割

酵母は微生物の一種で、糖を分解してアルコールと炭酸ガスを生成します。日本酒造りでは「清酒酵母」と呼ばれる専用の酵母を使い、米の甘みを旨味あふれる酒へと変えていきます。

清酒酵母の特徴

  • 高いアルコール耐性(約18〜20%)により力強い発酵が可能
  • 低温発酵に対応し、繊細な香りと味わいを引き出す
  • 華やかな香り成分(カプロン酸エチルなど)を生成
  • 安定した発酵力で品質を保つ

並行複発酵とは

世界でも希少な発酵スタイル

日本酒造りでは「糖化」と「発酵」という2つのプロセスが、同時に同じタンクの中で進行します。これが「並行複発酵」と呼ばれる方式です。

  1. 糖化:麹菌が米のでんぷんをブドウ糖に分解
  2. 発酵:酵母が糖をアルコールへ変換
  3. 同時進行:この2つが同時かつ連続的に起こることで、高アルコールかつ濃厚な味わいを実現

他の酒との違い

酒の種類糖化発酵特徴
ワイン不要(果糖)単発酵果実の糖をそのまま発酵
ビール先に糖化発酵は別タンクで単行複発酵
日本酒糖化と発酵が同時進行同一タンク並行複発酵

ワイン・ビール・日本酒の発酵プロセスを比較する図。3段階の図解で、それぞれの違いが視覚的に分かる

三段仕込み

仕込みの工程と意味

発酵初期に大量の原料を投入すると酵母がうまく働けません。そこで、日本酒では原料を3回に分けて加える「三段仕込み」が行われます。

  1. 初添(はつぞえ):酵母の環境を整える準備段階
  2. 踊り:酵母が増殖するための“休息日”
  3. 仲添(なかぞえ):原料の追加で発酵を本格化
  4. 留添(とめぞえ):仕込みの仕上げ。酒の骨格を決定

この工程により、発酵が安定し、日本酒らしい複雑でまろやかな味わいが生まれます。

発酵期間と温度管理

発酵にかかる日数

  • 普通酒:約18〜25日
  • 吟醸酒:約25〜35日
  • 大吟醸酒:最大で40日以上

温度と味わいの関係

発酵温度特徴向いている酒
高温(15〜18℃)発酵が早く力強い味わい普通酒など
低温(10〜13℃)ゆっくり進み繊細な香り吟醸・大吟醸

タンクと香りのイメージ図

酵母の種類

協会酵母

日本醸造協会が頒布する標準酵母。酒造ごとの品質安定化を支える。

  • 6号:クラシックな純米酒向き
  • 7号:香りと味のバランスが良い
  • 9号:吟醸香が強く華やか
  • 1801号(改良型9号):より強い香りと低酸

蔵付き酵母(天然酵母)

酒蔵に自然発生的に存在し、長年の発酵環境により独自の風味を形成する酵母。

  • 蔵の個性が強く反映される
  • 野生酵母由来の“ぶれ”も魅力

発酵管理と上槽

日々の観察と制御

杜氏や蔵人は、日々タンクの温度・泡・香り・糖度・pHなどをチェックし、発酵の進行を見守ります。職人の“勘”と科学的な分析の融合が求められます。

上槽(じょうそう)とは?

発酵を終えた「もろみ」から酒を搾る工程。以下の方法があります:

  1. 袋搾り:自然に酒が滴る伝統手法
  2. ヤブタ搾り:機械式、主流の方法
  3. 遠心分離機:最先端で高品質

袋吊りの様子を描いた構図。もろみがゆっくりと落ちていく透明感のある光景

まとめ

日本酒の発酵は「自然」と「人」が寄り添いながら生まれる芸術です。微生物たちの営みと、それを導く杜氏の技術が、日本酒という奥深い一杯を育んでいるのです。


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